高収入サラリーマンが「築古×減価償却」で節税する仕組みと注意点

目次

  • 築古×減価償却スキームの概要
  • なぜ節税になるのか?
  • ・物件所有中の計算
  • ・物件売却時の計算
  • 節税効果が大きい人
  • 注意点
  • ・過大な建物割合の設定
  • ・築古物件節税はあくまでも個人のみ
  • ・節税あきりで購入しない
築古×減価償却_節税する仕組みと注意点

「築古物件を買って、4年で減価償却をして赤字にすれば、税金が還付される」

不動産投資や節税に関心のある高収入サラリーマンの方なら、一度は聞いたことがある話かもしれません。

このスキーム、仕組み自体は今も成立します。
ただし、正しく理解して使わないと、後で思わぬ落とし穴にはまるのも事実です。

今回は税理士の立場から、このスキームの中身と注意点を整理します。

築古×減価償却スキームの概要

典型的な流れは次の通りです。

① 高収入の給与所得者が築古の木造物件を購入
② 建物部分を短期間(例:木造であれば4年)で減価償却
③ キャッシュフローは黒字でも、減価償却により会計上は赤字
④ その赤字を給与所得と損益通算
⑤ 所得税・住民税が大幅に軽減
⑥ 5年超保有後に売却して長期譲渡所得扱い

ポイントは、②の法定耐用年数を超過している築古物件については、法定耐用年数×20%の短期間で減価償却を行えることです。

・法定耐用年数
RC→47年
重量鉄骨→34年
軽量鉄骨→27年
木造→22年

つまり、木造で耐用年数を超過している物件(築22年超の物件)については、4年間(22年×20%)という短期間で減価償却を行うことができます。

なぜ節税になるのか?

一言でいうと、

✅物件所有中の減価償却費は高い税率の計算上経費にできて、5年経過後の物件売却時の税率は相対的に低い税率だからです。
ざっくりですが、年収2,000万円を超えてくると、所得税・住民税の合算税率が約50%となります。
例えば、築30年木造、建物価格2,000万円の物件を購入したと仮定します。この場合、減価償却費が500万円発生するので、
(2,000万円を4年で減価償却)税率が50%であれば、年間で250万円の税負担減になります。

5年合計で2,000万円の減価償却費計上、1,000万円の税負担減となります。
(実際に物件を購入すると、減価償却費以外の経費もありますし、家賃収入もあります。あくまでも減価償却費だけに着目した場合の試算です)
物件売却時の計算は以下の通りで、5年超物件を所有した場合には、
譲渡所得の約20%が所得税・住民税の合算税率となります。

譲渡所得 = 売却価格 −(取得価額 − 計上済の減価償却費)

計上済の減価償却費とは、物件所有中に経費計上した金額です。
本事例では5年間で2,000万円です。

減価償却が終了した建物に関しては、譲渡所得=売却価格となります。
(5%概算取得費もありますが、説明の簡略化のため、無視します)

✅物件所有中に節税した分は物件売却時に回収される構造となっています。

物件所有中に計上した減価償却費が大きくなればなるほど、物件売却時の譲渡所得が大きくなるというシーソーのような関係にあります。

もし、物件所有中に節税したときの税率と物件売却時の税率が同一であれば、節税効果はありません。

しかし、5年超保有した場合の物件売却時の税率が約20%なのに対して、物件所有中の税率はその人の所得に応じて、以下の表のように約15%~約55%となります。
物件売却時の計算
つまり、「築古物件×節税」とは、

✅長期譲渡の税率20%と物件保有中に適用される税率差を利用した節税になります。

節税効果が大きい人

物件保有中の税率が高ければ、高いほど節税効果が大きくなります。
逆に物件保有中の税率が20%以下の人は節税効果がありません。

ちなみに、高収入の給与所得者(サラリーマン)だけではなく、高収入・高所得の個人事業主、大家さんも同様の節税効果があります。

注意点

物件を購入した際には、土地と建物に購入金額を按分します。
築古物件を購入して節税するには、建物割合が大きいほど節税効果が大きくなります。
しかし、極端な建物割合の設定は危険です。

都内23区・木造物件・築40年で土地30%:建物70%で設定されているものがありました。固定資産税評価の土地建物割合からも逸脱しているので、このような極端な建物割合の設定は危険だと思います。
この節税スキームは、物件所有時の税率と物件売却時の税率の税率差に着目したものになるので、個人でないと節税効果はありません。
法人の場合は、物件所有時の税率と物件売却時の税率が同じなので、節税効果がありません。
そもそも論になりますが、5年後に購入金額と同程度もしくは大きく価値が落ちない物件を購入すべきです。5年後の出口の売却価格が購入金額を大きく下回ってしまうと、当然ながら、結果的に損をすることになりますので、節税になるということだけで安易に物件を購入すべきではありません。